【映画感想】リリイ・シュシュのすべて
そういえば、小学生の頃は仲良かった同級生が、中学2年になったとたん急に私をいじめ始めたことがあった。いじめと言っても、聞こえる声で悪口を言われるようなもので、今思えば軽度なものだったと思う。けれども、人の心はこんなにも簡単に変わるものなのかと驚くほどの変わりようであった。
私の中学校はその周囲270°くらいが田んぼに囲まれていた。朝早起きして畦道をよくランニングしたし、朝はカッコウの声、夜は蛙の声がした。映画の中の情景が、僕の幼少期とよく重なった。
若いゆえに心変わりも早ければ、いとも簡単に傷つく。それゆえに何か熱中するものが必要なのかもしれない。私にとってそれがBump of Chickenだったように、蓮見にとってはリリィシュシュだったのかもしれない。
この作品(岩井俊二監督作品)には、なんというか空白が多いように感じた。それは、逆光によって白飛びした画面であった、スローモーションであったり、静止したショットだったり、フィルムっぽいルックだったり。この空白の中に、一視聴者である「私」が入り込む余地があった。退屈だというわけではない。その空白の中で自分の思い出を想起したり、登場人物に思いを馳せた時間だけ、映画を見るという行為が主体的な体験になったという実感があった。
この映画の中で起こっていることは人ごとではない。一つボタンを掛け違えていたら彼らと同じような生々しく残酷な学生時代を過ごしたかもしれない。そう思わせられる力がこの映画にはあった。